【二人ごち09】 ホワイトサンタクロース【ショートショート】
サンタクロースと言ったらどんな人を思い浮かべるだろうか。
ほとんど共通して恰幅のいいヒゲもじゃで白髪のおじいさんではないだろうか。
何故この共通認識を持っているのかはサンタの方がこのイメージを守り続けているからだ。
サンタの世界を少し覗いてみよう。
案内人のサンタと呼ぶには相応しくない若々しいお兄さんが言った。
「俺もサンタの一人さぁ」
飄々とした身体付きに、ヒゲもなく、白髪でもない、ふぉっふぉっふぉっという笑い声も似合わなさそうで、そして赤服でもない。
こんな男がサンタなのだろうか。
サンタの一人ということは、サンタは複数人いるのだろうか。
見た目や声なんて簡単に変えられるぜ。と男が赤い服とサンタ帽を身につけた瞬間に、目の前には紛れもない絵本や映画で見るサンタクロースがいた。
紛れもなくあのサンタクロースだ。
サンタクロースはソリに乗るとトナカイ
に見立てた2台の機械のエンジンをかけた。
「昔は本物の空飛ぶトナカイを使ってたんだが、絶滅危惧種に指定されてしまって使えなくなってしまったのじゃ」
おじいちゃんの様な口調になっていた。サンタクロースなりきりセットは口調も変えてしまうらしい。
「そしてこの荷物袋」
そう言って指を指したのがパンパンに膨れている、山ほどのおもちゃや人形、絵本などが入っていそうな雰囲気だ。
中身を見せてあげよう。得意げにせっかくまとめた荷物を解き始めた。
10…20…30…………100
見た目以上に入る4次元袋だった。
「このおもちゃはサンタレターという道具で子供が欲しいものをセレクトしているのじゃ。これから子供たちにプレゼントをしに行くのじゃよ。プレゼントを靴下に入れるシーンや枕元に置くシーンは企業秘密だからここまでじゃな。メリークリスマス!」
そう言ってソリに乗り颯爽とかけて行った。
というCMだ。
おもちゃでなくサンタクロースの求人。
重労働ではない楽な運搬を出来るというのをアピールするものだった。
どの世界も運搬業は大変らしい。