【二人ごち07】音の美術館【ショートショート】
ある美術館に女性が一人で訪れている。
女性がエントランスに入るとモデスト・ムソルグスキーの組曲『展覧会の絵』 が流れ、人を迎え入れている。
女性がチケットを渡し企画展に入った。
一番最初に飾られている額縁には絵がはまっていないが歩みを止めた。
イントロダクションと挨拶が書いてある。
ようこそお越しいただきました。
ここからは音をお楽しみください。
そう、ここは音を楽しむ美術館。
最初の額縁の前に立つとオルゴールのネジを巻く音が聞こえ、ポロンポロンと音が流れ始めた。
題名は「春の始まり」。解説曰く生命の息吹を感じさせる作りらしい。
作品を鑑賞しつつ道を進んで行く。
作品の見せ方は多岐に分かれていて、額縁だけのものや曲のイメージした絵画がはまっていたり、写真がはまっていたりした。
音楽は、ロックやユーロビートなどジャンルは問わず多種多様な音が流れている。
絵と絵の間を通っている時に干渉しあい不響和音を奏でる。
どうやら額縁から音は放射線状に広がっているらしい。またこれも芸術かなと思いつつ色々な作品を見て行った。
企画展最後の作品は「美味しい音」という題名だった。
前に行くとは揚げ物がジュワッと揚がる音といい香りが漂ってきた。
今日の晩御飯が唐揚げに決まった瞬間だった。